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バックオフィスの業務改善はフロント部門を巻き込むことから始めよう

今回のテーマは、中小企業のバックオフィスの業務改善です。
今回お伝えしたいことを要約すると、『バックオフィスの業務改善は、バックオフィス部門単独では難しいから全社で取り組もうぜ』ということです。

バックオフィス業務は、ルーティンワークというイメージが強いこともあり、業務改善を進めやすいという印象を持たれがちです。
しかし、その一方でバックオフィスの業務改善は、経営者のイメージ通りに進まないことも非常に多くあるようです。

このようなギャップがなぜ生まれるのか?
今回はその辺を解きほぐしながら、実務の現場でも意外と軽視されがちなフロント部門を巻き込むことの重要性について、お話させて頂きます。

目次

1.ルーティン業務にも色々な種類がある

ルーティン性のある業務は、本来業務改善との相性は良いはずです。
しかし、ルーティン業務が多いはずのバックオフィスの業務改善は、多くの中小企業でなかなか進まない実態が見られるのもまた事実です。

これはなぜでしょうか?

これに対して、バックオフィス業務は知識とスキルを必要とする複雑なもので、ルーティン業務ではないという主張を行う方もいます。

この点、バックオフィス業務を本業とする1人として、その複雑性や難しさを否定はしません。
ただ、私はそれでもバックオフィス業務はルーティン業務が大部分を占めていると思っています。

それではなぜ中小企業のバックオフィスの業務改善は進まないのか?

それは、ひとまとめにルーティン業務とは言っても、他のプロセスとは異なった特徴をバックオフィス業務は持っているからだと考えています。

(1) 成果物完成までに要する時間が短い

工場の製造ラインの場合、1つの製品を製造するまでには複数の工程を通るなど多くのプロセスを要する場合もあります。
しかし、バックオフィス業務の場合、1つ1つの業務の中間的な成果物に辿り着くまでに要する時間は、短いと数分から長くても数時間程度のものがほとんどであり、多くの時間を要しません。

(2) 発生頻度が少ない

工場の製造ラインの場合、製品の製造プロセスが同日に何回も繰り返されます。
しかし、バックオフィス業務は、日に複数回行われる業務の割合は低く、週次であったり月次・年次であったりといった業務の割合が高くなっています。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

2.成功のカギは小さな改善活動の積み重ね

上述の通り、バックオフィス業務は、そもそも発生が頻繁なわけではなく、1個1個の業務時間が短いものが多いのが特徴です。
このような特徴を有すると、業務改善が上手くいっても、1つ1つの効果は小さくなりやすくなります。

バックオフィスの業務改善は、この効果の小さい1つ1つの改善活動をどれだけ丁寧に積み重ねていけるかが成否のカギを握ります。

しかし、中小企業のバックオフィスチームでは、この小さい改善活動を継続していくのは、言葉でいうほど簡単なことではありません。

バックオフィス業務は定期的な期限付き業務が多いうえ、中小企業のほとんどが1人担当制のため、誰かに任せることもできません。
バックオフィス担当者が業務改善を進める場合は、日常業務との同時並行が要求されるのです。

担当者としてはどうしても日常業務に流れてしまう環境の中、バックオフィス担当者だけに任せてしまっては、なかなか業務改善が進まないのは必然だと思います。
経営者が自らリーダーシップを取り、バックオフィスチームを支援しながら、1つ1つの課題を解決していくことが必要です。

3.業務改善を阻む壁

本来は業務改善を進めやすいはずのバックオフィス業務ですが、順調に進む会社は限られています。
業務改善が思ったように進まない理由を考えてみます。

(1) 成功しても褒められない。失敗すると責められる。

バックオフィス業務は、適切に処理できた場合は何事もなかったように進んでいくのですが、逆に何かあった場合には、従業員や外部も巻き込んだ形で可視化されることが多いのが特徴です。

成功しても誰も気づいてくれないけど、失敗したときは気づかれるという状況です。

バックオフィスに限らず、業務改善には試行錯誤が必要です。
バックオフィス担当者にとっては、失敗しないことが当然の状況で、短期的には失敗のリスクが上がる業務改善を進めるのに心的抵抗を抱くのは、ある意味では当然のことです。

(2) 自部門だけでは完結できない

バックオフィス業務は、①フロント部門から情報を入手し、②その情報を一定のルールに基づいて処理し、③その必要性に応じてアウトプットするものとして捉えることができます。

ルーティン業務であるバックオフィス業務は、システム導入により業務改善の効果が期待できますが、そこでカバーできる改善範囲は主に②と③になります。

システムは、一定の条件の下で、事前に決められたルール通りにデータを処理する局面で最大の効果を発揮します。
しかしその一方で、当初のデータ入力自体を誤ると、誤った結果を出力し続けるのもシステム化の特徴です。

このため、①のフロント部門からの情報入手の段階で、入手する情報が誤っていたり、不足していたりすると、そもそも②③で発揮できるはずだったシステム化の効果が発揮できなくなります。

このため、バックオフィス業務を本質的に改善していくためには、フロント部門からどのようにしてデータを入手するかの検討が不可欠になります。

4.バックオフィスの業務改善は全社的課題とすべき

上述の通り、バックオフィスの業務改善は自部門完結で行おうとすると、大きな効果は得にくくなります。
また、中小企業バックオフィスの1人担当制という特徴から、ある程度まとまった時間を定期的に確保することも難しくなります。

この状況を中小企業が打破していくためには、バックオフィス担当者ではなく、経営者のリーダーシップが重要です。

特にフロント部門をバックオフィスの業務改善に前向きに協力してもらうためには、バックオフィス担当者にその理由を語ってもらうのでは足りません。
経営者自らが重要な経営課題として位置付ける理由を説明し、フロント部門とバックオフィス部門とが同じ目標に向かって進めるように動機付けしてことが必要です。

バックオフィスの業務改善は、バックオフィス担当者のためだけになるものではありません。
適切なシステム導入を行えば、フロント部門側の負荷も軽減されます。
また、効率化による費用の削減効果だけではなく、データ管理を高度化していくことで、全社的な計数管理機能の向上も効率化と同時に達成できます。

中小企業のバックオフィスの業務改善の現場では、意外と疎かにされがちなフロント部門を巻き込むことを意識して、より良い管理体制を構築していきましょう。

良い経営は良い仕組みから

タスキー株式会社 取締役
公認会計士/中小企業診断士 色川 大輔

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