中小企業にもできる!バックオフィスのリモートワーク化実現のポイント②
~ペーパレス化の進め方~

中小企業にもできる!バックオフィスのリモートワーク化実現のポイント②

はじめに

新型コロナウイルスの感染者数は減少傾向を見せており、緊急事態宣言が解除されるエリアも徐々に広がりを見せてきました。これに伴い、休業要請も段階的に解除され始めてはいるものの、外出自粛の傾向は継続されており、経済活動への影響はまだまだ甚大なものがあります。
5月20日付のニュースでは、訪日客数は99.9%減の2,900人となったそうです。
半年前に誰がここまでの環境の変化を予想できたでしょうか。
経営者は事業環境の変化を言い訳にしてはいけないと言われます。しかし、誰にも予想できなかった、あまりにも厳し過ぎる事業環境の変化が現実に起きています。

>>>日本経済新聞

コロナウイルスの影響により、今後は倒産が増加していくことが予想されています。
企業活動を継続していくためには資金繰りが課題となりますが、営業活動を縮小せざるを得ない現在の経営環境の中では、営業などのフロント部門ができる努力は限られています。
このような環境の中では、経理・総務を含んだバックオフィス部門の強さが企業活動の継続のカギになります。
金融機関からの資金調達を円滑に進めるためには、まず現状で最善の対応を取っていることが必要です。つまり、不要不急の支出を止めていること、助成金を始めとした支援制度を活用していることが必要です。
また、今後の見通しを数的根拠をもって説明する必要があります。売上がどこまで回復すれば自助努力での企業活動の継続が可能になるのか、どの程度の金融支援が必要なのかをまず自社から説明することで、金融機関からの信用は大きく向上します。

バックオフィス業務は、企業活動の血流を支える活動であり、厳しい経営環境下では、まずますその真価が問われます。
私たちも中小企業のバックオフィスの一翼を担うものとして、どのような事態が生じても、円滑にバックオフィス業務を遂行できる体制作りを、中小企業の皆様と一緒に進めて参りたいと思います。

前置きが長くなりましたが、今回は中小企業のリモートワーク化に向けたペーパレス化について考えていきます。

ペーパレス化について、今回は取り上げていきますが、ペーパレス化はあくまで強いバックオフィスを作るための1つの取組みに過ぎません。
どのような事態が生じても、円滑にバックオフィス業務を遂行できる体制を作ることが重要です。
ペーパレス化は、強いバックオフィス作りに向けた環境整備の1つと言えるでしょう。

1.ペーパレス化とは
2.理想論
3.現実論
4.まとめ

1.ペーパーレス化とは

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ペーパレス化は、リモートワークのキーワードのようになっている言葉ですが、『紙を失くすこと』と捉えるのは、あまり良くないのかなと考えております。
ペーパレス化は、『取引を電子データ化すること』と捉えたほうが、より強いバックオフィス作りに近づいていくと考えています。

弊社では、バックオフィス業務は、“情報の加工業”として捉えています。
紙を失くすのが重要なのではなく、情報を加工しやすい環境づくり、つまり取引の電子化が重要ということです。

バックオフィス業務は、大別して対社内業務と対社外業務とに大別されます。 今回は、上記のうち対社外業務の電子化に向けた解決策を、①理想論と②現実論に分けて検討していきます。

2.理想論

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ペーパレス化と紙取引の電子化に向けた解決策を①理想論と②現実論に分けて検討していきます。
まずは理想論から見ていきます。

(1)企業間取引(BtoB)
理想としては、全ての取引がEDIで行われることでしょう。そうすれば、そもそもが紙の介入する余地はありません。
しかし、現在のほとんどのEDIは、大企業独自のシステムにログインして使用するか、標準化されていても業界単位であり、全ての取引をEDI化することはできません。

このような状況に対して、中小企業庁が主導で『中小企業共通EDI標準』の実証と普及が進められており、今後の発展が予想されています。 バックオフィス業務の最適化の観点からは、非常に楽しみなところです。

(2)店舗等からの購入取引
現在、注目なのは経産省の電子レシートに向けた取組みです。
まだ先の話にはなるかと思いますが、もし電子レシートが全ての店舗に導入されれば、購買取引の明細がデータで取得可能になります。
そうすれば、決済情報では得られなかった経理記帳にも十分な情報が手に入り、購入した企業側としても管理の高度化をあわせて図ることも可能になります。

3.現実論

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2.で述べたすべての取引のEDI化、電子レシート化が理想とはいえ、現在の経済環境では実現不可能なのが実状です。
ここでは現実的に実現可能な解決策を検討していきます。

(1)企業間取引(BtoB)
EDIへの統一はもちろん、実際には1つのやり方に統一することはできない中小企業が多いでしょう。
しかし、何もできないわけではありません。取引業者との交渉を通じて、可能な限り電子化を進めるべきです。

①不要な紙資料の廃棄と送受信の停止
まず何よりも優先して行うべきことです。
最初に以下で述べるデータでの送付依頼や紙資料の電子化を進めてしまうと、それだけで大きな時間を浪費してしまいます。

まずは、捨てることから始めましょう。

■本当に保存しなければいけませんか?
法定で保管が義務付けられている書類は仕方ありません。
しかし、それ以外は本当に必要なのか考えましょう。しばらく見ていない書類がほとんどではないでしょうか。
紙で囲まれている企業にとっては、全て捨てるくらいの気持ちでもちょうど良いのかもしれません。

■本当に送る必要がありますか?
資料を送付するには、紙面・FAX・メール・チャット全て大なり小なり労力とコストがかかります。
その労力に見合った目的と効果があるのか、一度見直す機会にすべきです。

■本当に受け取る必要があるのか?
資料を受け取るにも、紙面・FAX・メール・チャット全て大なり小なり労力とコストがかかります。 不要な書類は送付自体を止めてもらう、そのような取り組みも必要です。

②データでの送付依頼
これまで紙面で取引を行っていた取引先でも、依頼をすると切り替えてくれる企業が増えているように感じています。
現在多くの企業でペーパレス化に向けた取組みという面もあると思いますが、今回を機に紙で資料を送る非合理に気付いた企業も多いのかもしれません。
紙と電子で資料を送るということを比較すると、労力とコスト双方の観点から圧倒的に電子的方法が有利です。

 ちなみに弊社の拠点とする宮城県の第一地銀である七十七銀行にも、今回ダメもとでお電話してみました。
すると、まもなく郵送から電子的通知に切り替えるとの回答を頂きました。
紙資料を大事にしてきた業種の代表格でもある金融機関も変わりつつあるのかもしれません。

③紙資料のデータ化
データでの送付を依頼したとしても、全ての取引企業にご承諾頂けるわけではありません。
そのような場合、必要な資料はスキャンにより電子化することも重要です。
スキャンするというと、一般的に複合機で行うと思い浮かべる方も多いのですが、様々な方法があります。

A)専用スキャナー
弊社では専用スキャナーとして、ScanSnapを活用していますが、複合機より優れた面が数多くあります。
私はScanSnap ix100を常に持ち運んでおり、お客様から資料を頂いた資料はその場でスキャンし、極力紙面では資料のお預かりはしないようにしております。

■レシートなどのサイズでも連続スキャンやデュアルスキャンが可能
■ファイルの保存先が指定できる
■OCR機能によるファイル名の自動取得

B)スマホアプリ
手軽な方法として、スマホアプリでスキャンを行うことも可能です。
私はAdobe ScanとDropboxのアプリを併用しています。
Dropboxのアプリを利用されている方は多いと思いますが、PDF変換機能が付いているのをご存じない方も多いのではないでしょうか。
大変便利な機能ですので、ぜひ活用頂ければと思います。

④テキストデータ化
冒頭に申し上げた通り、最も重要なのは、紙を失くすことではありません。
①~③で入手したPDFデータ等を、どうテキストデータ化していくかです。
もちろん自社で入力するということも選択肢の1つでしょう。
しかし、標準化・定型化できる業務から外部に委託することや、OCRサービスの活用を検討するのも有力な選択肢の1つです。
請求書のテキストデータ化については、現在様々なサービスが出ています。
私が今注目しているサービスは、invoxというクラウドサービスです。
2020年2月にローンチされたばかりのサービスですが、会計業務までを見据えて設計されており、バックオフィスの効率化の強力なソリューションの1つになりうる可能性があります。
代表の横井様から話を伺う機会も頂いたのですが、将来的に実装を予定している機能も非常に興味深いものでした。

(2)店舗等からの購入取引
基本的には(1) 企業間取引と同様の流れで検討を進めることがおすすめです。
ただし、店舗等からの購入取引の場合、特徴的なのは下記の2点です。

■購入先の代替可能性が高い場合が多い。
一部の高級店などは別ですが、日常的に使用すると思われる備品や食品については、購入先を変えることは難しくない場合が多いと考えられます。

■資料の入手方法などについては個別交渉できない。
店舗に対して、レシートをメールで送付依頼などの電子化へのご協力をお願いすることなどは通常できないと考えられます。

以上の特徴を考慮すると、店舗等からの購入の場合、ペーパレス化を推進するためには、②以降に入る前に電子データで取引情報が入手可能な店舗等を優先することが重要です。

ペーパレス化に向けた購入店舗の優先順位
ⅰ.インターネット通販
ⅱ.キャッシュレス決済可能店舗
ⅲ.その他の店舗

4.まとめ

中小企業にもできる!バックオフィスのリモートワーク化実現のポイント②

ペーパレス化はあくまで強いバックオフィスを作るための1つの取組みに過ぎませんが、強いバックオフィスに向けた環境整備としては非常に重要な要素です。

近年はペーパレス化のための様々な魅力的なサービスがリリースされていますので、興味がある方ほどどうしても手法の選択になりがちです。
最も優先すべきは、『廃棄すること』です。
ペーパレス化は目的と優先順位を間違えずに取り組んでいけば、確実に成果が出るものです。このような状況下だからこそ、将来に備えて前向きに取り組む価値がある投資的な業務だと思います。

会計事務所は、顧問先のデータ化が進まないと自社業務の電子化が達成できないという特徴があり、自社だけでは完結しない非常にペーパレス化が難しい業種の1つです。
このため、弊社のグループ会社であるサクセスエール税理士法人では、顧問先企業からの預り資料の電子化をScanSnapプレゼントキャンペーンを行いながら、強力に推し進めていますので、顧問先企業様に限らずペーパレス化に興味があるお客様はぜひご相談ください。

次回は、SaaSツールを活かすためのバックオフィス業務の設計のポイントについて考えていきたいと思います。

タスキー株式会社 取締役
公認会計士・中小企業診断士 色川大輔