中小企業バックオフィスのリモートワークの実現の仕方①
~実現のカギと課題の整理~

中小企業バックオフィスのリモートワークの実現の仕方①

新型コロナウイルスはますます広がりを見せており、依然として収束の気配は見えません。私たちが拠点としている宮城県仙台市でも、緊急事態宣言の全国拡大を受けて、4月21日に県知事から各施設への休業要請が出されました。今後は大都市圏だけではなく、地方も含めて全国的に外出自粛がますます拡大していくことになります。

そんな環境の中、現在リモートワークに対する注目が拡大しています。
様々な業種・職種の方々がリモートワークを実現していく中、なかなかリモートワークに移行しきれていないのが経理を中心としたバックオフィスを担う方々です。

今回は、『中小企業のバックオフィス業務をリモートワーク化することはできるのか?』ということをテーマに一緒に考えていければと思います。

1.リモートワーク化を阻む壁

中小企業バックオフィスのリモートワークの実現の仕方①

中小企業のバックオフィスの特徴としては、大半の場合は1人や数人といった、ごくわずかな人数で運営されていることが挙げられます。
少人数であるならば、本人が動くだけで良いのだからリモートワーク化も簡単ではないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、現実には中小企業のバックオフィス業務には、リモートワーク化に向けて乗り越えるべき大きな壁がいくつもあり、実現は容易ではないのです。

(1)バックオフィスは全ての情報の集積地
バックオフィスには、企業で生じている全ての取引情報が集積されてきます。売上、支払、給与労務など、全ての取引情報の最終到達地点と言っても過言ではないかと思います。
このため、その性質上、社内外を問わず数多くの関係者が発生します。また、バックオフィスチームにとって直接的に関係を持っている方だけではなく、むしろほとんどが間接的な関係に過ぎないということも大きな特徴です。

(2)中小企業のバックオフィスは忙しい
バックオフィス業務の特徴としては、日常的な定例業務が多く、しかもそれが短いサイクルでやってくることが挙げられます。
ドラッカーも述べていますが、抜本的な業務改善には、『まとまった時間』が必要です。限られた人員で業務を行っている中小企業のバックオフィスでは、このまとまった時間の確保が難しいのです。
このため、導入すれば著しい効率化を実現できる新しい仕組みが次々に世に出ている現代社会においても、なかなか導入が進まないのです。

2.リモートワーク実現のカギ

中小企業バックオフィスのリモートワークの実現の仕方①

(1)クラウドシフト
リモートワーク実現のためには、まず業務が場所に縛られないための環境を準備する必要があります。そのために必要なインフラの構築に必要なのが、クラウドシフトです。
一口にクラウドと言っても、様々な定義がありますが、今回のクラウドシフトは、市販のSaaSへのシフトを指しています。
クラウドにシフトしていくこと、SaaSにシフトしていくことは、リモートワーク実現のために2つの観点から重要です。

    ①システムの自社構築の困難性
中小企業の限られた経営資源ではコストの観点からも、人的資源の観点からも、自社独自で効果的かつ効率的なバックオフィスのシステム環境を準備することは著しく困難です。

    ②SaaSの進化
近年のSaaSの進化は著しいものがあります。
バックオフィス業務は全ての情報の集積地であり、これまでは非常に高価なERPシステムでも導入しない限りは、1つの業務システムで完結することは難しいものでした。
しかし、現在のSaaSは、他社サービスとの連携を重視しており、API連携等を活用することでソフトウェア間の同期処理を行うことが可能になっています。

(2)全取引の電子化
様々な情報にアクセスできる業務環境を準備したとしても、必要な資料が電子化されていなければ、リモートワークは実現できません。
バックオフィス業務では、社内外を問わず様々な関係者がいるため、どうしても紙面によるやり取りが残りがちです。これをどのようにして電子化していくのかが、リモートワーク実現のための最大の課題です

3.実現に向けた課題

中小企業バックオフィスのリモートワークの実現の仕方①

リモートワーク実現の2つのカギの達成に向けた具体的な課題を整理していきます。

(1)クラウドシフト
現在、営業管理や工程管理などのフロント業務から、会計や労務などのバックオフィス業務まで、様々なソフトウェアがリリースされており、多くの企業にとっては必要最低限の機能の確保は可能です。
このため、企業側の課題としては、下記の2つが課題となります。

    ①何を選択するか?
まずはどのソフトウェアを使うか選択する必要がありますが、これは業務部門任せにしても専任担当者任せにしてはいけません。
業務部門、バックオフィス部門が相互のお互いの業務要件を確認して、全体最適の観点からソフトウェアを選んでいく必要があります。

    ②どのように使うか?
SaaSを使う場合、最も重要なのはシステムと業務に対する意識と姿勢です。
システムを導入した場合、導入しただけで便利になって自動化されるという認識を持ってしまいがちではありますが、自社業務との適合性の問題があり、そのようなことはなかなかありません。
システムを導入する場合、(A)業務にシステムを合わせるか、(B)システムに業務を合わせるかが必要となりますが、SaaSを導入する場合、(B)システムに業務を合わせる意識が非常に重要となります。

(2)全取引の電子化
取引のデータ化、ペーパレス化を進めるための課題を3つの観点から整理していきます。

    ①対社内業務
社内調整で導入が可能ですので、経営者の意識次第では十分に可能です。
私たちのこれまでの経験上間違いなく言えるのは、全員が賛成してくれることはないということです。
むしろ中小企業では社内の管理系業務は軽視されがちですので、社員を巻き込む必要がある場合は一層強い抵抗が予想されます。
現在は技術的には社内業務の大半はペーパレス化が可能です。
だからこそ、抵抗を受けたとしても、やり切る経営者の意識と覚悟が成否のカギを握ります。

    ②企業間取引(BtoB)
企業間取引の場合、現在のビジネス環境では、そうは簡単にいきません。
Webでのみ完結する取引はまだ少なく、全ての取引を電子化するのは現時点では困難と言えるでしょう。

    ③店舗等からの購入取引
ネット通販等で商品を購入する場合は電子化が可能です。
しかし、実務的には緊急に必要になるなどの理由により、店舗購入は避けられない会社が多いかと思います。
キャッシュレス決済等を導入することにより一定の電子化は可能ですが、決済情報には何を買ったかの情報が含まれておらず、経理記帳には不十分な情報であるという課題があります。

3.まとめ

中小企業バックオフィスのリモートワークの実現の仕方①

コロナウイルス影響による緊急事態宣言により、急速に注目されているリモートワークですが、これは外出できないから仕方なくやるものと考えるべきではありません。
特にバックオフィス業務については、これまで中小企業バックオフィスが向き合いきれていなかった業務標準化と効率化の課題に直面していると考えるべきでしょう。

リモートワークが実現するバックオフィス = 理想のバックオフィス

リモートワークは、業務の標準化、特にその中でも情報の整理・活用の方法が事前に定まっていない限りは不都合ばかりです。しかし、逆に情報の整理・活用の方法が事前に定まっていれば、リモートワークへの意向はスムーズに行えます。
また、中小企業バックオフィスの最大の課題である、業務属人化による退職リスクについても、リモートワークが実現できる体制であれば大部分は解消可能です。
なぜなら、リモートワークが実現できる体制は、いつでもアウトソーシングできる体制とも言えるからです。もっと適切に定義するならば、少なくとも企業の血流となる業務、会計記帳業務、労務関連業務、給与計算業務などについては、いつでも外部に委託することが可能になります。

コロナウイルスによる影響で経営への影響は著しいものがあり、営業活動は縮小せざるを得ない企業が増加しており、多くの中小企業経営者は資金繰り対応などに頭を悩ませる日々を送られているかと思います。しかし、その中でも生き残っていくためには、将来の成長につなげるためには、未来への投資を行っていかなくてはなりません。

その中でも緊急に対応せざるをいけないリモートワークという課題が、中小企業バックオフィスにとっては、未来への投資とイコールになるというのは、非常にありがたいことです。
現在では緊急の課題となっている中小企業様が多いかとは思いますが、ここを乗り切って、より効率的で効果的なバックオフィスの実現に向けて進んでいきましょう。

皆様のお悩みの少しでも参考になればと、次回は取引の電子化に向けた『ペーパレス化』をテーマにお話をさせて頂ければと思っております。
長文を最後までお読みいただきありがとうございました。

タスキー株式会社 取締役
公認会計士・中小企業診断士 色川大輔