AIは会計業界の黒船なのか?


2014年、マイケル・A・オズボーン准教授が発表した論文『雇用の未来』は、会計業界に衝撃を与えました。
ITの発達による自動化が進み、10年後には現在ある仕事の大半が必要なくなる、そんな未来になることを予測したのです。

会計士、税理士の仕事がなくなる

こんな記事を見たことある方も多いのではないでしょうか?

今回は、「本当に会計士・税理士の仕事はなくなるのか?」について、考えてみたいと思います。

1.論文『雇用の未来』と会計事務所の仕事


論文の中では、「10年後になくなる仕事」が予測されていました。
そして、そこには下記のような会計事務所関連の仕事が含まれていました。

8位     税務申告書作成者 99%
12位   データ入力作業員 99%
37位   給与計算担当者  97%
114位 会計・監査担当者 94%


文が発表されたのが2014年ですから、10年後と言えばあと5年後です。
仮にこれらすべての仕事がなくなったと仮定したとき、どれだけの会計事務所が経営的に耐えられるのでしょうか?

2.会計業界の市場規模は意外と大きい


『雇用の未来』の中で10年後になくなる仕事を業界でまとめると、会計業界は小売業に次いで2位になるそうです。
経済論理から考えて、市場規模が大きい業界ほど、力を入れるIT関連企業は多くなるでしょう。

実際、小売業界は無人レジやAmazon GOなどによる無人化が進行しています。
効率を重視するコンビニやスーパーマーケットなどは、これからどんどん無人化が進行していくでしょう。
しかし一方で、誰から買うか?どこで買うか?を重視するような付加価値型のショップについては、無人化していくことはないでしょう。

一方で、会計事務所の仕事はどうでしょう?
AIが税務申告書を作成できるようになった時、会計監査ができるようになった時、わざわざ会計事務所に仕事を依頼して頂けるでしょうか?

申告書の作成自体、会計監査でのチェック自体について、お客様にご理解頂けるような明確な違いを見せることは難しいのではないかと感じています。
少なくとも依頼して頂ける方が減少していくことだけは間違いがないでしょう。

このように考えていくと、私たちが想定している以上に状況が急激に進んでいくということは十分にあり得るでしょう。

3.どんな仕事がなくなるのか?



そもそも会計士や税理士という仕事はありません。
どんな仕事がなくなるのかと考えるとき、業務単位・作業単位まで落とし込んで考えなくてはいけません。

会計事務所の仕事は、会計業務や税務業務を、別の観点から考えると私はこのように定義できると思います。

情報の2次加工業

会計業務や税務業務の業務量の99%は、原始情報を“作る”仕事ではありません。
レシートや請求書、給与情報や販売情報などの原始情報を“加工・集計”していく仕事です。

そして、情報の加工・集計は、ITが最も得意とする領域です。
この領域に該当する仕事は、ほとんどがなくなっていくと私は考えています。

実際、API連携やCSVインポートを活用することで、AIの活用なしでほとんどの会計税務業務を圧縮していくことが可能です。

ITサービスのクラウド化が進んでいる現在、将来的には下記のようなサービスがますます発展してくると思います。
そうなると、ますます単純な記帳業務はお仕事にならなくなっていくでしょう。

■API連携
■EDI取引
■電子レシート

この辺については、また別の機会に皆様に状況を共有していきたいと思います。

4.AIは会計業界の黒船なのか?

ITの進化、AIの進化は、今後間違いなく会計業界にこれまでにない大きな変化をもたらすでしょう。
そういう意味では、AIは会計業界の黒船なのだと思います。

しかし、ペリーの来航を機会に日本はどうなったでしょうか?
志ある先人たちが、従来の枠組みだけにとらわれず、今の日本の礎を作ってくれました。

私たち職業会計人も、黒船の来航におびえるのではなく、従来の枠組みにとらわれずに自らの役割を見つめなおしていくことが必要です。

職業会計人の最大の強みは、会計に関する知識でも税務に関する知識でもありません。
中小企業経営者の最も身近なパートナーであることです。

幸いにも、タスキー株式会社・サクセスエール税理士法人の仲間たちとは、『中小企業経営者の力になる』という志を共有できています。
この業界の激変期、会計業界に維新を起こすべく、全員で自らの仕事をアップデートして参ります。

公認会計士・中小企業診断士 色川大輔